「死神蜘蛛」

その影が視界をかすめたあたりから何かが狂いだした。

その姿を目にした仲間が、まるで魂を抜かれたかのように力なく佇んでいる。

叱咤の声と仲間を揺り動かすその腕も一つ、また一つと力を失っていく。こだまするように聞こえていた混乱が刈り取られていくかのように消えていく。

木々の音だけが耳に響く。気が付けば自分の息の音さえ聞こえなくなっていた。

音もなく現れた敵のその貌を見たとき、私は私達の敗北を悟った。

「秘密基地」

「いいかい。僕たちだけの秘密だよ。」

そう始まる噂を子どもたちの集まりで何度か聞いた。
そして、結局それは嘘だったという言葉も何度も聞いた。

でも、嘘にしたって聞く回数が多すぎやしないか?

そんなことを思ってから、近くに行くたびに岩壁を調べて歩いた。

「…ん?」

そうして、結局噂は噂なんだなと思った時、ふとそれに気づいたんだ。

「ピラニア」

いいか。水中で奴らに見つかっても決して慌てるな。
例え目が合っても、奴らは思いのほか慎重だ。こちらを伺っているうちはまだ大丈夫だ。
できるだけ音を立てず、ゆっくりと距離をとれ。
単独なら見た目ほど好戦的じゃない。そのまま岸へ逃げられるさ。

「星喰」

2020/05/09~17 – 23h

クソ、なんでこんなにもなるまで放っておいたのだ!

あの小さな星屑を喰らっているうちはまだマシだ!こっちに降りてきちまったら、取り返しがつかなくなるぞ…。

は!泣き言はそこまでにしようや。つまるところ、ここで食い止めれば問題ないってことなんだろ!
…さぁ、征こうか!!

「祭壇」

風が嵐に変わる前に村を出た。

習わしに従えば神事として他の人も同行するが、最期の頼みとして取りやめてもらった。
今の風の様子では、山頂を降りる頃の方が危険になるからだ。

山道を中腹まで登る頃、風は嵐に変わったが、切り立った岩壁の御蔭でふらつきながらも脚をすすめることはできた。
岩壁にすがりながら山頂を目指す。

滝のような雨の中を進むと突然風が強くなり、見上げれば空が開けていた。
渦巻く黒雲と叩きつける雨の中に伝え聞いた通りの祭壇が見えた。

稲妻が閃き山頂をかすめる。
その光は岩棚に降りた竜を照らし出した。

それが私を待つ神様のはずだった。
しかし神様は私には目もくれず、嵐を切り裂くように咆哮を上げていた。

私には神様が一本の木を守っているように見えた。

祈り

兵士は祈る今日を生きて越えられることを。
騎士は祈る戦いに没する魂に平安があらんこと。

いつだってそうだ。多くのものは巻き込まれた。

敵と呼ばれる相手に、恐れはあれど憎しみはなく。
されど、それを倒さねば自分に明日はない。

ここは戦場。弱者が語り得ぬ場所。

いつだってそうだ。運命の片鱗はその終局にて姿を表す。