ファンタジーの世界観でキャラクターを作るとき、翼は魅力的な要素の一つと考えています。天使や精霊だけではなく、モンスターにも使えるので自分の中に描き方のセオリーがあると応用の幅も広がります。
先に「日直」という有翼種を題材にしたイラストを制作しました。
サブキャラクターも含めて翼のポーズをいくつか描いたのですが、一つの画面で翼のポーズを並べてみると動きの幅が少ないなと感じました。
翼の動きにリアリティがほしい。そのために改めて翼の描き方を考えてみたいと思います。
目次:
これまで描いてきた翼はこれ
光の方向がわかっていれば、なんとなくでも翼を描くこともできます。
例えば、こんな感じです。
ここまでは頭の中にある翼のイメージを軸に、制作を行って来ました。しかし、曖昧な部分もあるのでこのままでは改善が難しいと考えます。
今回は参考資料を元に構造面を考え直し、翼にリアリティを加える方向で改善を検討していこうと思います。
確認していくのは主だった関節の位置と、翼を構成する羽根をどの程度描くのか?というところが中心になります。
※ご注意ください※
この記事では翼の構造の考察を行って行きますが、学術的な精度までは求めません。あくまで「イラストを制作する上でのリアリティを加味する」ことが目的になります。更に高い精度を求める方は、本記事を足がかりに図鑑や専門書をご参照ください。
鳥の翼を参考資料に、描くための情報を整理します
まずは、表面的な部分を眺めてみましょう。
鳥さんお願いします。
ありがとうございます。とても美しい翼です。
鳥の翼は9種類の羽根でできている
鳥の翼を見てみると、構成する羽根の大きさはいくつかあるように見えます。
知識面からも足がかりを得るためにウィキペディアから翼の資料を引用します。
正確には9種類の羽から翼は構成されているようですね。
それぞれの羽根には呼び名がありますが、学校の勉強ではないのでここでは割愛します。
ここで重要なのは「翼にリアリティを加味する為に、何種類かの羽を描く必要がありそう」ということです。
では、9種類すべてをかき分ける必要があるのでしょうか?
鳥さんもう一度。お願いします。
ありがとうございます。とても美しい翼です。
どうでしょうか。翼として見たところでは9種類ある様には見えません。大雑把に頭側と尾側で大きく2種類に別れているように見えます。
- 頭側の細かい羽根群
- 背中から並び、尾側に向かって徐々に大きくなる。
- 一枚一枚の形は曖昧な部分も多い
- 尾側の1枚1枚の形がわかる、長くて大きな羽根
羽根は目に見える違いで4つに分けられそう
写真と図と見比べてみると、翼の先の方は根本と羽の流れが変わっていますね。図の1・2・3はある点から曲線を描くように広がっています。
この流れはイラストを描く上でも重要になりそうなので、そこを踏まえて翼の羽を下記の4つに再分類します。
- 背中からつながる細かい羽根。ニュアンス的ところから始まり、先端に行くほど羽根の形が徐々にはっきりする部分。流れは基本的に下方向。
- 頂点を中心に広がるような流れを見せる。形状の変化は1と同様。
- 羽根が大きく、形もはっきりとわかる。流れは1の延長で基本的に下方向。
- もっとも長く大きな羽根。流れは2の延長。
先の図と写真は背側から見たものでしたので、正面からも見てみたいと思います。
背中側の羽根に比べると、正面側の細かい羽根はふわっとした印象がありますね。また、翼の反りの方向が逆になるので描く際には注意が必要ですが、羽根のとらえ方としては良さそうです。
羽根については一旦ここまでとし、実践時に検証してみたいと思います。
リアリティのある動きの要、主な関節の位置を確認します
次に、翼を動かすことを考えてみましょう。
最初に描いた翼を見返してみます。
なんとなくぐにゃっとしていますね。
人の腕を描くときもそうですが、関節が意識できていないと妙に柔らかくなります。
翼の関節については環境省 猛禽類保護センター のイヌワシの翼を参考に、先程の図に関節を描き込んでみましょう。ここでは大雑把に肩と肘と手首をとらえてその位置を確認します。
鳥が翼を伸ばした時、肘の関節は完全に伸び切らない様です。でも伸ばした翼では肩からから手首までピンッとはっていますよね?
ここには肩から手首にかけて筋が通ってるためです。
翼に力を入れるとこの筋が張るため、肘の関節は目立たなくなります。逆に力を緩めると筋も緩むため、関節が目立つ様になります。
力を抜いた翼を描くときのがポイントになりそうですね。
構造的な考察をしようとするとここから筋肉へつなげたくなりますが、ここでは割愛します。イラストを描くときは見えないですからね。
羽根と関節を合わせて構造への理解を深めます
最後に構造と羽の4分類を合わせて整理してみましょう。
まず、2と4の羽根の流れは手首を頂点に広げれば良いことがわかります。
また、3と4のの大きな羽根について、どこから生えているのかがいまいちわからないので、もう一度 環境省 猛禽類保護センター のイヌワシの翼 を参考に図を描いてみます。
どうやら3・4大きな羽は翼の筋肉部分に突き刺さる様に生えているようです。 1・2の細かな羽根は3・4の根本と筋肉部分を覆うように生えているんですね。
また、翼の構造としては下記の写真も参考になると思います。
逆光に羽根が透けているので、筋肉部分との関連性が見やすいですね。
以上で翼の構造については考察できたと思います。これを踏まえて、イメージで描いた最初の翼を修正しながら実践してみたいと思います。
途中、翼を動かしたときに羽根はどう連動するのか?がわからなくなりました。
資料を探したところ、京都大学大学院 理学研究科のものがわかりやすかったです。
※本文は口語調なので少しわかりにくいかもしれませんが、翼を動かしたときの羽根の連動についての図はわかりやすいです。
アタリの段階としてはイメージがつかめてきたと思います。
構造を意識しながら描いてみると、ここまでは人の腕で言う手首の関節の動きだけで翼を動かそうとしていたようです。
肩と肘の関節との連動も考えて描くと、リアリティのあるポーズをつけていけそうです。
先に述べたように、この記事では関節の可動域までは考察していません。動画内での考察も人の腕をベースに考えているので、現状では仮説となります。
鳥の翼の可動域については、機会を作って改めて調べてみたいと思います。
更に描き込み、翼を完成させていきたいと思います。
まだ描き慣れていないところもありますが、今回の考察をベースにしていけばよりリアリティのあるカッコいい翼を描けそうですね。
実践してみると、大きな翼を描くときは1・2部分で形がわかる大きさになった羽根もしっかり描くほうが、翼としてのバランスが取れそうでした。
また、形のわかる羽根の筋を描き入れるとより立体感を作ることができそうです。
描く前に考えておきたい翼のイメージ
本記事の目的は翼にリアリティを持たせるための考察であり、前置きが長くなることを避けるために、ここまで取り上げなかった話題があります。
それは描きたい翼のイメージについてです。
海鳥の翼はシュッとしたイメージ
小鳥の翼は柔らかそうなイメージ
大きな鳥の翼は頑強で硬そうなイメージ
鳥の翼と一口に言っても、種類や体の大きさ、生活環境によって受ける印象は大きく異なります。
写真を参考資料にするにしても整理しておきたいポイントが2点あります。
- どんな印象の翼を描きたいのか?
- どの程度のリアリティを求めるか?
本記事の資料としてワシや鷹といった体の大きな鳥を選びました。これは自分が描きたい翼のイメージとして「力強さ」「野性味のある荒々しさ」があるためです。
そして、リアリティについては図鑑の挿絵に乗せるような正確さは求めていません。正しさで言えば翼先端の羽根の数にも決まりがありますが、羽根の再分類で書いたように、「見てわかる違いの描分けができている程度のリアリティ」で良いと考えています。
正しい知識はリアリティを増す強い要素ですが、そこに加えてイラストらしい誇張を入れて行くのが、良いイラストへつながると考えています。
あなたはどんな翼を描きたいでしょうか?
本記事が資料集め・描き方の足がかりになりましたら幸いです。
まとめ
- 資料を集める前に考えたいこと
- どんな印象の翼を描きたいのか?
- どの程度のリアリティを求めるか?
- リアリティを加味する翼の構造
- 羽根は大きさ・流れの違いから4ブロックに分けて描く。
- 翼の下にある肩・肘・手首の関節を意識する。
- 大きな羽根は筋肉部分に突き刺さって一緒に動く。
- 小さな羽根は大きな羽根と筋肉を覆うように生えている。
- 実践でのポイント
- 翼のポーズは肩関節からの連動で作ることを意識する。
- 小さな羽根群の最後、形がはっきりわかる羽根はしっかり描くとバランスが良い。
- 形がはっきりしている羽根の筋を描くと、立体感を描きやすい。
この断片があなたの星へ続く道を、少しでも照らすことを願って
「翼の描き方/構造を理解してイラストのリアリティを上げよう」への1件のフィードバック
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