薄暗い遺跡の中に、ペンを走らせる音が静かに響いていた。
―まめになったものだと、自分でも思う。
ギルドの依頼を受けるために、文字は覚えているが、書くのは自分の名前くらいで、あとは読めれば生活が回る。実際、近隣随一と呼ばれる前も、その後も、それで問題はなかった。
それが今の依頼人と組むようになってからは、これまでの人生で書いた文字数と同じ…。いや、おそらく数倍から十数倍は文字を書く様になった、と思う。数えるのは阿保らしい。
始めこそ、面倒くせぇなと思って適当に済まそうとしていたが、そのたびに反論ができないように順序だて、正確な情報の価値と、必要性を説かれれば、最後にはわかったと言わざるを得なかった。学はないが、そこまで馬鹿ではないつもりだ。
もともと感覚で動く分、探索という視点は重視していない。行って戻ってくる程度の道順くらいしか覚える気がなかった。何かあったらその場で臨機応変に対応。自分一人ならそれで十分だった。
―おい。もう、わかったからその目をやめろ。
記憶の中の依頼人が、価値と必要性の話を繰り返そうとしている。散漫な思考の中くらい自由にさせてくれ。ぐうの音も出ないところに、思い出せとあれもこれもと聞かれていると、気分もくさくさしてくるのだ。
結局、逃げ出すように行った場所へ確認に戻るのだが、これが一番つまらなかった。
つまらかったので、戦闘が終わったら消耗品の確認ついでに、それまでに得た情報を大雑把に書くようになった。あくまで大雑把だ。そもそも気にしていない情報など得ようがない。
自分はあくまで大雑把に先行する。気になるところがあるのであれば、気になるやつが行って、気が済むまで確認すればいい。細かい調査は自分の領分ではない。性分でもない。
この辺が落としどころだろうと思う。一方的な開き直りではない。最近は価値と必要性を説かれることがないので、相手もそのあたりは察して…。
ふと、思考が切れ、感覚が周囲へと向かう。見える範囲に変化はなかった。
暗く静かな通路も、周りに転がり黒い霧に返ろうとする敵の亡骸も、その霧の錆のような臭いも変わらなかった。
しかし、直感がささやく。敵だ。
―そろそろ雑魚には飽きてきたんだよ。大物を頼むぜ。
背後に置いていた得物を後ろ手に握りなら、光の届かない通路の奥の暗がりへ、期待と共に視線を向けた。
目次:
テーマ
Eater&Killer
モチーフ
Daemon-eater
コンセプト
以前に創作した「Daemon-eater」の衣装を変更。
思い付きと実験から生まれたキャラクターですが、「Eater&Killer」の世界観として広げていったところ、舞台がダンジョン探索になりそうで。廃探索にビキニアーマーは説得力がないなと。
描き進める上でも、この辺が引っかかるか、スムーズかは大切だと思っています。
挑戦課題
- 塗りは以前の「塗り重ねていく描き方」に戻す
- 描き込む場所とざっくりさせる場所の差を意識する
発見/制作後記
以前の描き方に戻すことに加え、描き込むところとそれ以外を意識してみると、思った以上にラフで検討した部分が残せるように感じました。
調整レイヤーを使った着色は、時間短縮を図って始めましたが、自分には合わないように感じます。今回の手ごたえから考えるなら、着色で時間短縮を図るよりも、ラフ完成時に全体のバランスが取れているかを考えたほうが、結果として時間短縮につながりそうです。
まぁ、グレースケールとカラーでは印象が変わるので難しいところですが、数を重ねていくことで塩梅を探りたいと思います。