厚塗りでイラスト制作し始めた頃、制作のヒントにしたいとイラストレーターの方のインタビュー記事を拝見していました。イラスト技術を向上させる為に大切なことはなにかという質問にい対して、共通していた回答が「完成イラストを繰り返し作ること」でした。
この実践のために自主制作でも締め切りを決めて取り組むようになりました。
始めた頃は順調だったのですが、枚数を重ねるうちにラフ検討の時間が長くなっていきました。アイデアが思い浮かぶまでに時間がかかったり、出てきたアイデアもそれまでのものと似たものだったり、なかなか先の工程に進めないことが増えていきました。
「イラストを描きたい。でもアイデアが全然出ない!」
この状態が続くと、イラストを描くことがしだいに辛くなってしまうんですよね。これは流石にまずいのでアイデアの出し方の方面で解決のヒントを探すようになりました。
そんなとき、しばらく前に描いた落書きを見つけ、そこからラフをスタートしてみたところ、何もない状態から制作を開始するよりも心理的ハードルがかなり低く感じられました。
この方法に手応えを感じたので、ここからアイデアの出し方を試し、アイデアのストックをするようになりました。
今回は、現在日課としているアイデア出しの手順を紹介したいと思います。
この方法はアイデアが浮かぶのを待つのではなく、資料などからえた印象を集め、連想することでアイデアを組み上げていきます。
目次:
まずは10枚程度の画像を準備します
必要になるのは10枚程度の資料画像です。
私の場合は画像系のSNSサイト「Pinterest」を利用しています。
Pinterestとは?
Pinterestは画像を集めることができるSNSです。Web上にある画像をコルクボードにピンドメするイメージで集めたり、サービスを利用している他の人の作ったピン=画像を閲覧することができたりするサービスです。
Pinterestのタイムラインには自分が興味を持った=ピンした画像と同じ傾向の画像が表示されます。しばらく使っていると表示される画像に幅も出てくるので、自分の興味の方向性とランダム性の両傾向の画像を眺めることができます。
パーツ集め…ではなく、印象と連想を集める
パソコンでPinterestのタイムラインを表示すると1画面が大体10枚くらいの画像が表示されます。
本来ならタイムラインのキャプチャを使いたいところですが、通常タイムラインには他の方の作品も見えているため、今回は自分の作品群のフォルダを表示して説明します。
画像からアイデア出しをするというと「ポーズはこの画像の模写をする。髪型はこの画像から。衣装は…」と考えていきそうですが、そうではありません。
上記の方法でアイデアを組んで行ってしまうと、パーツを寄せ集めた作品を作ることになります。今回の様に過去の作品からパーツを集めてしまうと挑戦要素も乏しいものになります。これはよくありません。アイデアはもっと飛躍してほしいと思います。
ここで重要になるのが画像を見て自分が受け取った印象です。
並んでいる画像群からパーツではなく、感じた印象を単語として書き出して行きます。はじめは直感に引っかかったもの。次に観察して気がついたものを書き出して行きます。
例えば、自分の作品群を見て拾った印象は下記になります。
いくつか単語が並ぶとそこから連想する別の単語や文章が浮かぶと思います。それも同じ様に書き出していきます。
これを繰り返して行くと頭の中にイメージが浮かぶ瞬間が訪れます。
これをアイデアとして描きだします。
今回描き出したアイデアは下記になります。
これはアイデアなので、実際にはここを足がかりにして資料を集め、情報を補強しラフとして整理していきます。
印象と連想を頼りにすると、そこには見ている人の独自性・個性が現れてきます。それは、ここまで見てきたもの、体験した世界、好みなどによって受ける印象や、発生する連想が異なるからです。試しに、先の画像からあなたの印象・連想を拾ってみてください。同じ結果にはならないと思います。(一度結果を見てしまった後なので、それに引っ張られるということはあると思いますが。)
これは見たものから何を選択するかが人によってちがうということです。
「個性は選択に現れる」というのは以前に読んだニリツさんの書籍でも言われていることですね。
この方法を応用すると、世界観や方向性が決まっている際、それに合う画像を中心とすることで連想とイメージをある程度制御できます。普段からやっていると、仕事としての制作をする際にも資料からアイデアを出しやすいと感じます。
習慣づくりまでの道のり
今回紹介した方法の高橋 晋平さんの「アイデアが枯れない頭のつくり方」からヒントを得ています。
高橋 晋平さんは玩具などの企画をされている方です。有名な玩具に∞プチプチなどがありますね。2013年のTEDxTokyoに登壇されるなどアイデアパーソンとして注目された方です。高橋さんの他よりも抜きん出ているところは発案される企画の多さ。そして、アイデアはひらめきではなく、仕組みと習慣から作り出しているとのことです。
自分の習慣を作る際にもここから仕組みの一つをヒントとして借りています。
「キーワード✕しりとり」を試してみる
書籍で紹介されれているアイデア出しの一つにしりとりを使った仕組みがあります。
企画の方向性となるキーワードを決め、そこからの10個の単語をしりとりで出していきます。キーワードとしりとりで出した単語をかけ合わせることでアイデアを作っていくというのが概要になります。
この方法では殆どのものがいまいちなアイデアになります。完璧なアイデアを1つ待つよりも、駄目なアイデアを100個だす。その方が結果として多くのアイデアを提案できるという考え方ですね。
振り返ってみると、私の制作時間は長いので、アイデアを出す機会そのものが少なかったと思います。作りたい習慣も新しいものでしたので、ひとまずこの方法を試してみました。
半年ほどしりとり形式の方法を試してみたのですが、キーワードとしりとり出しの単語の2ワードだけではイメージが浮かばないことの方が多くありました。また、しりとりでは思った以上に自分の既知の情報だけに偏ってしまうため、長く続けて行くことは難しそうでした。
ただ、単語を集めることでイメージを連想することには手応えを感じました。2ワードではなく、もう少し数を増やせば連想するイメージの重複も避けられそうです。
「キーワード✕ランダムワード」を試してみる
次に試したのがWeblio辞書サイトのランダム表示機能です。
名前の通り辞書に登録された単語をランダムに表示してくれるので、単語の偏りを避ける方法としては申し分ないように感じました。
しかし、使いだしてみると問題がありました。取り扱う単語の幅が広すぎて単語や解説を読んでも意味がつかめないものや、細かすぎる情報がありそれが連想の邪魔になってしましました。
「興味の方向+適度なランダム性」=Pinterest
連想の幅を確保するためにもランダム性はほしい。ただ、目にする情報には自分の興味の傾向がほしい。
最終的にたどり着いたのが今回のPinterestを使ったアイデアの組み上げ方法です。
Pinterest以外のサービスでも使える方法だと思いますので「アイデアが出なくて辛い…」というときには、試してみてください。
この断片があなたの星へ続く道を、少しでも照らすことを願って