「竜骨回廊」

「竜骨回廊」

「やめとけって言われた?そりゃそうだろ。どうしてもってな急ぎの旅じゃなきゃ。避けて通った方が賢いってもんだ。」

すでに引退したという、その老いたガイドは煙を吐きながら掌を上に向けた。

作品の概要/ストーリー

宿場町から半日ほど向かうと、そこには端から端まで徒歩でひと季節以上かかると言われている断崖がそびえている。

自分たちが向かおうとしているのは、断崖の上、そこに広がる高原だ。

別の道もある。宿場町から日を追いかけて3週間ほど歩くと、獣達の住処を縫うように高原へ登る峠の麓に着く。

安全と万全を取るのであれば、その麓の街で護衛を雇って登るのが確実だ。

「でも、そこでしか見られない、すごい景色があるって聞いた!」

勢い込む相棒の横顔を盗み見る。あぁ、これは無理だな。すでに心は骨の上を歩いている。

輝く瞳を煙越しに眺めながら、老いたガイドがニヤッと口の端を釣り上げた。

なんだよ、あんたも話す気満々じゃないか。

そんなことを思いながら、半日となった旅程で浮いた差額と、新たに必要となるモノの調達先を考えていく。

「度胸がある奴だけが、歩ける道だ!」

思考半分で聞いていると、語気を強めたガイドのそのセリフが嫌になるくらい良く聞こえた。

過去と自分の間を行きつ戻りつ語るガイドの言葉に、相棒は身振り手振りを交えながら目を輝かせている。そんな彼女につられるように、老ガイドの話も熱を帯びていた。

この様子なら必要品に迷っても相談に乗ってくれそうだな。

ただ、一つ。老ガイドに相談しても、手に入れることが難しいものがある。

「度胸」

相棒が興味を示す道程では、大概必要になるそれだが、いまだに調達する先がわからずにいる。

ただ、彼女を眺めていれば

「それはコイツに任せるか」

そう思えるくらいには、自分も覚悟を決めているらしかった。

「竜骨回廊」
「竜骨回廊」
HEART&LOGIC
HEART&LOGIC

テーマ

空を歩く

モチーフ

断崖と雲の間に吊り下げ垂れた竜(ワーム)の骨

コンセプト

古くから竜だけが捕らえられ続けるその場所は、いつしか物好き達がだけが通る回廊となった

挑戦課題

グレースケールでの描きこみと、グラデーションマップでの着色

発見/制作後記

本作は「幻想藝術考15」展に向けて制作しました。

グレースケールで描き込み、グラデーションマップで着色を行っています。
この方法は以前にも試した方法です。黒をうまく使えず、コントラスト比を出せなかったことを反省しました。当時からどのくらい前に進めたのかを確認するための制作でもあります。

描き込みからはAdobe Photoshopがメインツールとなります。同社のソフトウェア群の「Adobe Color」のWebツールを使うと、ほかの画像からカラーテーマやグラデーションマップを作ることができます。

試すことがないままでしたが、今回の制作が良い機会になりそうです。

カラーにした時に柔らかすぎる

初めてグラデーションマップでの着色に挑戦した「交差する肖像」と比べると、今作はある程度納得のできる画面になったと思います。

ただ、仕上がりの印象としては「曖昧な部分が多い」と感じました。

以前に制作した「祈り」の連作では色を乗せてからしっかりと描き込みました。

色を乗せてから描き込んでいくと、最終的な印象も確認しながら調整できます。比べて、グレースケールで描き込みを行い、グラデーションマップで着色すると、色を乗せた時に印象が変わります。

デッサン力を高めると、印象の差は少なくできるといわれていますが、現状はまだまだカラーで確認した方が仕上がりに納得できるものが作れそうですね。


もっとデジタルで描くことを活かそう

今回使ってみた「Adobe Color」については、かなり好感触でした。

グラデーションマップを1から作ろうとすると、これまでは完成イメージと色を合わせていくことに時間がかかっていました。

Adobe Colorでは、すでにある画像(今回はキャラクターラフや空の画像)を使用すると、完成形の色イメージは先につかめている分、グラデーションの変化の調整程度で済みました。

先にカラーイメージがより具体的につかめるという点で、Adobe Colorはこれからも使っていきたいですね。


同じようにデジタルの強みを活かすという点で、描き方を改めた方がよいかもしれません。

技術を向上させたいということもあって、これまでは基本的に手で描く様にしてきました。ただ、最近は製作の時間を短くしたいと考えています。

つくる続けるためには自分の好きをより理解し、特化することが必要と最近は考えています。これまでは製作時間の確保を優先してきましたが、こういった探索の時間を作るためにも、制作時間を圧縮ができると好ましいと考えています。

本作でいえば、竜の骨の突起についてはコピーで並べればよかったかなと反省しました。もちろん、ライティングの調整などは必要ですが、シルエットを探っている段階では有効だと考えます。

Adobe Colorを活用することもそうですが、デジタルツールの強みを活かすことを考えていきたいと思います。

まとめ

グレースケールではあいまいさが残ると描きました。
今回は予定時間いっぱいまで描きこんでいますが、この段階を早めに切り上げることでカラーで描きこむ時間も確保できると思います。

より強調したい、質感を大切にしたい部分はカラーでさらに描き込みを行えば、それ以外の部分との差をより作れるのかもしれません。

この方法については、試してみて情報を共有したいと思います。

制作動画

久しぶりに制作動画も作ってみたので、良かったら見てみてくださいな。


この断片があなたの星へ続く道を、少しでも照らすことを願って

投稿者: 0.1

厚塗りで「存在感や重さ、質感による説得力」のあるイラストを目指しています。 日本では線画をベースとしたイラストが主流ですが、そこから外れたモノもイラストの世界を広げる為に必要だと考えています。「世界観にもう一味試したい」そんなときには、ぜひお声がけください。

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