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本展概要
本展は「横浜美術館」「愛知県美術館」「富山美術館」の合同企画展として、第二次世界大戦以降の現代アートの巨匠にいたる約70作家の名品が集結するというものです。
「3」という数字をキーワードとし、展示構成を「3章立て」「30年区切り」で展開するとして、各時代の概観を知ることができる展覧会です。
色と構図要素/ヴァシリィ・カンディンスキー
028 ヴァシリィ・カンディンスキー 網の中の赤
この作品を興味深く見られたのは、ここ最近構図についての書籍を読んで要素をまとめているかだと思います。書籍によっては最近の作品群を題材に説明されているモノもあり、構図の要素を理解する点では腑に落ちないものもありました。
この作品を見ながら構図要素を思い出していくと、効果がとても分かりやすく感じます。例えば直線は停止ということ。これは画面に対して水平・垂直に書かれた線に強く感じます。逆に傾いた直線は動きを示すというのもわかりやすいと思います。直線が基本静止を示すのに対して、曲線は動きを示すというのも読み取りやすいのではないかと思いました。
また、使われている色のリズムも楽し気で心地よく感じます。
色彩についてはこれから勉強していきたいと考えていました。勉強を重ね知識を増やしていけばより多くを読み取れる作品だと思います。
知識と効果を見られる画面として、興味深い作品だと思います。
親しみやすさ/パウル・クレー
032 パウル・クレー 蛾の踊り
一目見て、落書きっぽいなと感じました。ただ、そこが親しみやすさという入り口になっていると思います。絵画というよりも、絵本の挿絵の様に感じました。
この作品を見て頭に浮かんだのは「祈り」でした。
深い水の底か、暗い洞窟の中で差し込む光を見つめているようなイメージ。神秘的な雰囲気を感じました。
ただ、作品を見た後にタイトルを確認してみると、光に関係するところは共通していましたが、印象としてはズレている様に感じます。ほかの展示作品のタイトルを見ても、自分が感じた親しみやすさとは何かズレを感じます。
印象とタイトルとの違和感という点で、作者の背景に興味がわいた作品です。
具象とわかりやすさ/ルネ・マグリッド
058 ルネ・マグリッド 王様の美術館
ルネ・マグリッドの作品は過去にも見たことがありました。その時は現実と空想をつないだ夢のような絵だなと感じていました。
当時に比べて抽象画の時代背景に触れてから見てみると、マグリッドの作品は抽象がの中でもかなり異質だと感じました。
一番の違いは描かれている個々のパーツの具体性だと思います。ほかの抽象画が「何か描かれているがよくわからない」から始まるのに対して、マグリッドの作品は個々のパーツは何かわかるものであることが多いように思えます。
この具体性が作品世界に入るハードルを下げているのだと思います。私たちの生きているこの世界との共通点を見つけやすいとも言えそうです。知っているモノ・共通点の多さが興味を引く強さになっているのだと思いました。
ただ、いくらパーツが具体性をもって描かれているとしても、作品世界のメッセージ自体は抽象的な内容になります。この、立ち入りやすさと待ち構える何かががおかしいという感覚が、マグリッド作品のだまし絵にも似た面白さなのだと思いました。
まとめ
近代アートの作品は、それ以前の作品に比べ、作品そのものがもつ情報量は少ない場合が多くあります。これは鑑賞者側がもつ情報、見た側が何を思い浮かべるか・考えるか・感じるかに強く依存しているということを学びました。
今回は私の感じた内容を中心に書いたため、作品の背景とあっているかはわかりません。
正解かはわかりませんが、自分の感覚は作品に興味を持つ入り口になると思います。それは納得であったり、違和感であったり、再確認であったり様々でしょう。
本展は近代アートを俯瞰できる企画展として、20世紀アートの図録のような展覧会です。自分はどの時代の作品に興味を持てるのか?その興味を入り口として時代背景や作家に踏み込んでいくきっかけとしてよい展覧会だと思います。
あなたも自分の興味の入り口を探してみてはいかがでしょうか?