『子供が勉強にハマる脳の作り方』から学習習慣と環境づくりについて学ぶ

『子供が勉強にハマる脳の作り方』から学習習慣と環境づくりについて学ぶ

何かにハマるときは脳の快楽回路が働いています。快楽回路は2系統が存在し、興奮系の回路と安心系の回路が交互に働くことで、ハマるという状態が作られます。快楽回路がハマるという行動に必要なことは知っていましたが、2系統のうち「癒し系のセロトニン回路も大切」というのは知りませんでした。今回はここを中心にまとめます。

今回は篠原 菊紀さんの『子共が勉強にハマる脳の作り方』を拝読しました。

篠原 菊紀さんは脳活動の研究をされている方。
ハマるという状況がどういうものか?それを活用することはできるか?という方向で興味を持ちました。

書籍概要

本書の対象は0~18歳までの子供を持つ親御さんがターゲット層です。
意欲的に学習に取り組んでもらいたいという願いは、子供の将来を案じる親御さんの多くに共通する悩み。しかし、現代では子供の心を引き寄せるモノが身の周りに多く存在する。勉強だけがすべてではないにしても、人生を通して学習はとても大切なこと。子供がハマっているモノのように学習にも力を入れてくれないものか?
ハマるという脳の仕組みを確認しながら、その仕組みを学習に役立てる方法を伝えようというのが本書の概要です。

対象を外れてもハマるという脳の活動の仕組みと、それを動かすための行動は参考になると思いました

今回は、特に大切になると感じた「安心の快楽回路/セロトニン神経系の働き」を中心に、本書の感想も含めて書いていきたいと思います。

ハマるという現象の中心には、2つの快楽回路の働きがある

特定の行動を繰り返す状態、いわゆるハマっている状態を作り出しているのは快楽だというのは、以前から何度か耳にしたことがありました。

しかし、快楽回路といっても詳しくは2つの回路が存在するようです。

ドーパミン神経系は「ワクワク」「ドキドキ」の興奮系。「動的」な快感です。セロトニン系は「ホッとする」「安心する」という癒し系。「鎮静的」な快楽です。

つまりギャンブル条件で、報酬が得られたり、得られなかったりする体験をすることで、心を落ち着かせる働きが強化されるのです。

『子供が勉強にハマる脳の作り方』:P64

ハマりやすいモノとして浮かびやすいモノにゲームがあります。
ゲームの設計ではプレイヤーが取り組む課題の成功率を50~70%に設定すると効果的とされています。

ハマるという脳活動的にも、このやや低めの成功率はとても理にかなっているようです。

課題への挑戦による興奮と失敗。それを繰り返しながら、課題を攻略できた時の喜びと安心。興奮系の快楽回路と、癒し系の快楽回路が交互に働くことによって、その行動を繰り返す回路は強化されていくそうです。

ゲームではこの繰り返しがプレイヤーを飽きさせないように提示されるため、ハマりやすいということになります。

ゲームを例として考えると、行動にハマるという仕組みは理解しやすいように思います。ただ、これを現実での生活に当てはめようとすると、もう少し積極的な取り組みが必要になりそうです。

安心のセロトニン神経系が働くように環境・習慣を作りましょう

間違いや失敗をしても、そこを通じて解決方法を見つけながら次のステップに向上していく。自主学習によってこうしたサイクルが身につくと、脳が活性化を促して結果的に学力向上が期待できます。

…(中略)…

満足や安心を感じさせてくれるセロトニン神経系がしっかりと働くと、次の快がくるまで待てる状態を作り出します。たとえば、「その場所で勉強するとなんだか落ち着く」といった場所にハマる快感がそれです。

『子供が勉強にハマる脳の作り方』:P157

学習は「今日だけやれば終わり」という短期的なものではなく、中長期的な行動になります。

ドーパミン系の興奮による快楽は勢いはあるのですが、長く続くことはありません。
次の快に期待し、それを待つという状態を作るためには癒し系の快楽回路をうまく働かせてあげる必要があるそうです。

癒し系の快楽回路をうまく働かせるためには、学習をするために快適な環境を確保することが優先になります。

…(中略)…
なぜ子供は勉強しないのでしょうか?
…(中略)…
呼吸、給水、食事のように自動的に欲求が起こり、それを自動的にしてしまうようにはできていない。

人間の脳にとって、勉強はいまだ不自然極まりない行為の1つなのです。

『子供が勉強にハマる脳の作り方』:p4

そもそも人間にとって勉強は不自然な行為になるそうです。つまり、漠然と取り組んでいてもそこから離れてしまうことの方が多いため、意識的に取り組みやすい状態を維持することは必須になります。

ハマるという状態を作るための成功率設定は50%~70%がよい。そうとはわかっていても、課題をクリアできない状態というのは、ストレスがかかってきます。

勉強という不自然な行動×環境的負のストレスの状態では、理想の成功率を目指すのは困難に思えます。

人は失敗したときに集中力が上がると言われます。
これは、うまくいかない・思ったようにいかないときには興奮系の回路が働いているためです。

そこで過ごすこと自体が快適という環境を確保できれば、課題に失敗しても、クリアしても、ふと気を抜いた瞬間に、癒し系の快をより得やすくなります

2系統ある快楽回路のうち、まずは比較的働きにくい癒し系回路の条件を整えること。それが学習にハマるための第一条件になります。

これは子供だけではなく、大人にとっての学習でも同じことが言えそうですね。

集中するための目標の立て方

興奮系の快楽回路と癒し系の興奮回路が交互に働くことが、行動にハマる条件になります。癒し系の快楽回路を働かせる準備ができたら、次は興奮系の快楽回路を働かせる必要があります。

勉強で興奮系の快楽回路が働いているのは「さて、やるか!」と、意欲が高まっているときです。

意欲を高める方法として有名なところに、報酬や当面のゴールの設定があります。私はなんとなくそれぞれ別々の方法ととらえていたのですが、ゴール設定に注意を払うことで報酬の効果もより高めることができそうです。

ゴールには「うまいゴール」と「まずいゴール」があります。
…(中略)…
「勉強ができるようになりたい」では評価できませんが、「教科書の江戸初期の文化を覚える」「この2ページを学習する」なら、できた、できないが簡単に評価できます。

簡単に評価できると、それを達成した場合にドーパミン神経系が働いて学習行動が強化されます。

『子供が勉強にハマる脳の作り方』:P222

意欲と集中力を引き出すという点から当面のゴールを設定することは間違っていません。ただし、”ゴールライン”はわかりやすく引くことが重要になりそうです。

数値目標は良いゴールの一つといわれます。数値はそこを越えたから越えなかったかが一目瞭然なので、評価が簡単であるという点でうまいゴールだとわかります。

ゴールラインをイメージでとらえた場合、まずいゴールはゴールラインの幅が広く色も薄いと考えられます。ゴールライン上に来た時も「これ、どこがゴール?」という状態では、快楽系の回路は働かないということですね。

ゴールラインを作るときは細くくっきりしたラインで引くこと。ここをイメージすると助けになりそうです。

まとめ

学習の習慣化と居心地の良さがつながったのは新しい発見でした。

社会人になってから利便性の点から喫茶店で勉強することが増えましたが、あくまで何かしらの用事ついでという利用の仕方が多かったように思います。

場の快適さという点で思い返してみると、喫茶店の環境は自分に合っているように思います。
今後はもっと積極的に活用していきたいですね。

これからも成長していくために、あなたも快適に過ごせる場所を探してみてはいかがでしょうか?


この断片があなたの星へ続く道を、少しでも照らすことを願って


<参考>

投稿者: 0.1

厚塗りで「存在感や重さ、質感による説得力」のあるイラストを目指しています。 日本では線画をベースとしたイラストが主流ですが、そこから外れたモノもイラストの世界を広げる為に必要だと考えています。「世界観にもう一味試したい」そんなときには、ぜひお声がけください。

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