今回は郷 和貴さんの『超わかりやすくビジネスに効くアートを教えてください!』を拝読しました。
本書は、デート以外で美術館に行ったことがないというブックライターの郷 和貴さんが、東大の文学部教授で美学・形而上学が専門の三浦 俊彦さんにアートについて教えてもらいにいく、という対話形式の書籍です。
最近書店のビジネス所のコーナーでも「アート」の文字を目にする機会が増えました。私も美術館に足を運ぶことはありますが観賞は絵画が中心。それ以外のアートに触れる機会は少ないなと思いました。
アートとはなにか?なぜ、今注目されているのか?
同じ目線で学べそうなので、読んでみました。
目次:
なぜ、アートが注目されているのか?
先生……アートって何ですか???
…(中略)…
本来、「いまある概念を壊す工夫」ですよ。アートの役割は。だから別に美しい必要はないわけです。エロでもグロでも、不快なものでもいい。驚きを与えて、人の価値観を揺さぶるものであれば、アートとしての価値は高い。
『東大の先生!超わかりやすくビジネスに効くアートを教えてください!』/p17
ビジネスの分野で「イノベーションが必要」と言われるようになってしばらく経ちます。そうは言っても、「ではどうするのか?」というところで足が止まってしまっていることも多いのではないでしょうか?
そこで周りを見回してみると、アートの分野では「いまある概念をぶち壊す工夫」がずっと続けられてきました。今ある概念とは価値観や常識とも呼ばれますね。
分野は違うけど、その考え方は参考にできるのではないか?ということでアートとその思考が注目されている様です。
普段からアートの「いまある概念をぶち壊す工夫」を目にしていると、自分の中でも価値観・常識の枠が広がっていきます。
狭い価値観・常識に囚われない人、頭の柔らかい人。こう言った人たちがクリエイティブな人と評されることが多いのではないでしょうか。
では、クリエイティブな人たちとそうでない人たちの違いはなんでしょうか?
違いは、「ある情報が脳に入ってきたときの方の反応の仕方」と言われています。
…(中略)…
「発想の引き出し」がいっぱいある。
…(中略)…
アートというものは基本的に「この作品に触れれば、今まで感じなかった何かを感じてもらえるのではないか」という信念に従って制作者が提示するものなんです。だから「脳の刺激材料」としては最高で最強。
…(中略)…
ただ、アートといっても「大衆芸術」(大衆文学や大衆音楽)なんかは、…(中略)…クリエイティブな刺激は弱くなってしまうでしょうね。
『東大の先生!超わかりやすくビジネスに効くアートを教えてください!』/p45
人間の脳はエネルギーも機能も節約の方向で最適化をしています。
引用にもある発想の引き出しはよく使われるものほど、メンテナンスされ、引き出しやすい状態が保たれます。
しかし、引き出されることのない引き出しは、メンテナンスの優先度が下がります。錆び付いてしまい、引き出しにくくなっても使わないからと放置されるということです。
アートに触れる機会を増やすと、この引き出されることのなかった引き出しを強制的に開けることになります。たま、そもそも存在を知らなかった引き出しを発見することにもなります。
アートに触れる機会を増やすことは、イノベーションそのものになるというよりも、イノベーションに繋がりやすい様に、脳のメンテナンスをすると考えたほうが良さそうです。
ただ、触れるなら大衆芸術は避け、現代アートなどのハイアートに触れるほうが良いそうです。
ただ、正直この辺りのいわゆるアートっぽいアートってよくわからないですよね。
なぜ、現代アートはよくわからないのか?
アートの輪郭がつかみづらい理由はね、はっきりしているんです。
…(中略)…
アートは太古の昔からあるワケです。その発展の過程で「これは役に立つ!」と世間に思われた流派に、「デザイン」「建築」「まんが」といった具体的な名前が付けられると、アートから抜け落ちたり分離していく。
今のアートは、その残骸なんです。
…(中略)…
積極的に役に立たないわけではなく、今の時代ではまだ実用性が見えていないというだけです。
『東大の先生!超わかりやすくビジネスに効くアートを教えてください!』/p38
現在名前がついている分野も、その実用性が分かるまではアートだったんですね。
残っているのは、長い年月を経てもその実用性がわからない部分。
そのよくわからない未開の可能性へアプローチを続けているのがアート。そう考えるとアートがよくわからないことは、ある意味当然のことになりますね。
見てみること。日常の中で「?」に出会い、知らなかった引き出しを見つけよう
意味があるのか?
そう問えば「あるかもしれないし、ないかもしれない」そう答えが聞こえてきそうです。
そんなものに割いている時間はない?
効率の点からみるとそうでしょう。
しかし、効率だけでは先に進むのが難しいところまで来ているというのが現状で、だからこそイノベーションが必要と叫ばれているわけですよね。
効率的かどうか。その問いかけの基礎になっているのは、現在の私たちが持つ価値観・常識です。
本書で大衆芸術よりもアートらしいアート、つまりハイアートを見ることが推奨されているのは、価値観・常識という基礎の部分を揺さぶってくるからの様です。
ハイアート、つまり「アートらしい作品」になればなるほど現実世界の常識や価値観と連動しないということです。連動しないから理解しづらいわけですが、だからこそ、そこにアートとしての価値がある。
…(中略)…
逆に敷居が低く感じるということは、それは大衆芸術である可能性が高いんです。娯楽としての実利はあるけども、常識を揺さぶるような体験はできないかもしれない。だから、提案したいのは、一見敷居が高く見える「ハイアート」を体験すること。
『東大の先生!超わかりやすくビジネスに効くアートを教えてください!』/p96
1960年代以降はコンセプチュアル・アートという名のもとにこういった作品がた・・・・・・・・・・っっっくさん出てきました。
「目に見えるものだけが造形芸術じゃなかろう」という態度を表明するアーティストが増えたんですね。
…(中略)…
いままでは「印象派が出てきた」とか、「シュールレアイムズが出てきた」といっても、実際の作品を見ない限り観賞したとは言えないという前提は揺るがなかった。
だけど、コンセプチュアル・アートはその前提を取り払っているので、「実際の作品を見ること」よりも、「アートとはいったい何なのか?」ということが深刻な問題になってくる。
『東大の先生!超わかりやすくビジネスに効くアートを教えてください!』/P149
アートはすでにアートそのものに疑問を投げかけている様です。
重要なのはこうした自らの存在意義にすら疑問を投げかけるという姿勢を知るということです。
自らの基礎となる部分に疑問を投げかける。そういうアプローチがあるのだという事に触れるとが大切です。
なぜか?そもそもなぜイノベーションが必要なのか?
それは答えが出ている問題を効率的に解いていくだけでは、限界がきているからです。
要するにアートに触れることは、答えのない問題へ挑む、準備をしているってことなんですね。
追伸:
アートの中でも現代工芸は、その入り口として比較的見やすいそうです。
ここは展覧会を探して見に行ってみようと思います。
この断片があなたの星へ続く道を、少しでも照らすことを願って
「『超わかりやすくビジネスに効くアートを教えてください!』 に今アートが注目されている理由を学ぶ」への1件のフィードバック