「祭壇」

「祭壇」

風が嵐に変わる前に村を出た。

習わしに従えば神事として他の人も同行するが、最期の頼みとして取りやめてもらった。
今の風の様子では、山頂を降りる頃の方が危険になるからだ。

山道を中腹まで登る頃、風は嵐に変わったが、切り立った岩壁の御蔭でふらつきながらも脚をすすめることはできた。
岩壁にすがりながら山頂を目指す。

滝のような雨の中を進むと突然風が強くなり、見上げれば空が開けていた。
渦巻く黒雲と叩きつける雨の中に伝え聞いた通りの祭壇が見えた。

稲妻が閃き山頂をかすめる。
その光は岩棚に降りた竜を照らし出した。

それが私を待つ神様のはずだった。
しかし神様は私には目もくれず、嵐を切り裂くように咆哮を上げていた。

私には神様が一本の木を守っているように見えた。

「祭壇」
「祭壇」2020/04/29~05/06 – 26h

その村は険しい山岳の中程を、もうしばらく登った場所にありました。
山岳の谷には激しい風が渦巻き、風が嵐となれば人の村など一思いに洗い流されてしまうでしょう。

その村は山岳でも特に険しい頂の根本に寄り添っていました。
頂は嵐を切り裂き、その御蔭で村は風の中でも続いていました。

その頂には神様が住むと言われています。

その年の風は特に強く、村人は神様の助けを求めました。
そして村の習わしに従い、一人の少女が神様の元へ送り出されました。

村人は黒い嵐の昼夜を祈りながら過ごしました。

嵐が過ぎ去ると、荒れていた風もいつもの年よりも穏やかになりました。
人々は神様に感謝を捧げました。

村に日常が戻った頃、予期せぬ出来事が起こります。
なんと、神様の元へ送り出された少女が帰ってきたのです。

人々は困惑しました。
逃げてきたのかと怒る人もいました。
また嵐が来るのかと怯える人もいました。

そんな村人たちに少女は手にしていた果実を見せました。
「ちがうんだって」
そう言って少女はほほえみました。

それから少女は持ち帰った果実の種を植え、果実の木を育てはじめます。
これは後に「りんご園の巫女様」と呼ばれる女性の、その始まりのお話です。

作品の概要

テーマ

感謝の形

モチーフ

りんごが食べたいドラゴンと、それを察した少女の話

コンセプト

感謝を形にして示すことは大切。だけど、これまでや形式だけにこだわらず、目の前の相手が求めることを察するように努めたほうが、お互いの益は大きくなる。

挑戦課題

ドラゴンと背景

制作動画

今回の反省

ここでは挑戦課題であるドラゴンの、特にウロコで得た手応えと、彩色のでの気付きについて書いていきたいと思います。

ウロコについて

ドラゴンのウロコは場所によって大きさを変える

ウロコの描き方はイラストレーターのタカヤマトシアキさんの描き方を参考にしています。

公開されている動画の中で「動く部分は細く、それ以外は大きく描くことがポイント」と説明されていました。

これまでもそれを意識して挑戦していたのですが、なかなか良い感じにまとまりませんでした。

今回の制作では少し描き方をつかめたように思いましたので、下記にまとめます。

大きさが揃うと模様。考えて配置するとウロコ

自分の制作動画を振り返ってみると、ウロコの検討で戻り作業をしているときは描いているウロコの大きさが周囲と揃ってしまったときでした。

ウロコの検討は丸を描いて行うのですが、周囲と大きさが揃ってしまうと水玉模様感が強くなるようです。これは他の形で検討したときも同じように思います。

揃った大きさの形が連続していると生物の体表としては違和感につながり、逆にある程度の不均一さがリアリティにつながると思いました。

筋肉が動く時の隆起もイメージする

「動く部分は細かく」というのは関節部だけの話ではなく、筋肉ごとの凹凸で考えたほうがウロコとしてはしっくり来るものが描けそうです。

主要な関節だけを見てウロコを配置してしまうと、1枚が大きくなりすぎてしまい鎧のイメージが強くなります。これは「動きづらそう」という印象になると思いました。

生物としてのリアリティを求めるのであれば、筋肉の凹凸を意識し、それに合わせてウロコのサイズを変えるのがよさそうです。

主要な関節は把握しやすいですが、筋肉の凹凸となると頭の中だけでイメージするのは難しいと思います。このあたりも資料を集めることの大切さにつながると思いました。

ドラゴンのウロコを検討するポイントまとめ

  1. 周囲と大きさが揃わないように注意する(揃うと模様になる)
  2. 主要な関節だけではなく、筋肉の凹凸に合わせてウロコのサイズを変える

色彩について

画面全体に入れた青系の色は、光の当たる部分ではマスクで抜く

今回も彩色はグラデーションマップとレイヤー効果で行っています。

第1ステップとして、空気遠近法や影の色のベースとなる青系をグラデーションマップを使って画面全体に乗せます。

同じ手順で描いた「海底探窟家」は暗い画面だったので気にならなかったのですが、今作のように明るい画面だとそのままでは光が当たる部分で良い色が出にくく感じました。

ナチュラルハーモニーを意識して着色する場合、光の色は青と補色関係の黄に寄るので青の上から黄を乗せると色としては鈍くなってしまいます。光の色が強く乗る場所は、青のグラデーションマップをマスクするほうがよさそうです。これは今後も活かしたい気づきですね。

次回への課題

定期的に岩肌をモチーフに描きたくなるのですが、毎回うまくいかないなと悩みます。
特に近景の岩が難しく感じています。

制作動画を振り返ってみると、どうも岩の面を細かく検討しようとし過ぎているようです。

どこかでありふれたモチーフであり、知っていると思っていましたが、完全に思い込みでしょう。

岩らしい岩を描くことに挑戦することが、今後の課題になりそうです。

風が嵐に変わる前に村を出た。
習わしに従えば神事として他の人も同行するが、最期の頼みとして取りやめてもらった。今の風の様子では、山頂を降りる頃の方が危険になるからだ。

山道を中腹まで登る頃、風は嵐に変わったが、切り立った岩壁の御蔭でふらつきながらも脚をすすめることはできた。岩壁にすがりながら山頂を目指す。

滝のような雨の中を進むと突然風が強くなり、見上げれば空が開けていた。渦巻く黒雲と叩きつける雨の中に伝え聞いた通りの祭壇が見えた。

稲妻が閃き山頂をかすめる。その光は岩棚に降りた竜を照らし出した。

それが私を待つ神様のはずだった。しかし神様は私には目もくれず、嵐を切り裂くように咆哮を上げていた。私には神様が一本の木を守っているように見えた。
「祭壇」2020/04/29~05/06 – 26h

この断片があなたの星へ続く道を、少しでも照らすことを願って

投稿者: 0.1

厚塗りで「存在感や重さ、質感による説得力」のあるイラストを目指しています。 日本では線画をベースとしたイラストが主流ですが、そこから外れたモノもイラストの世界を広げる為に必要だと考えています。「世界観にもう一味試したい」そんなときには、ぜひお声がけください。

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