今回は斎藤 英喜さんの「読み替えられた日本神話」を拝読しました。
和のモチーフとして日本の神様を調べてみると、その特徴としていくつもの姿を持つことがわかります。
和御魂と荒御魂、本地垂迹思想というものを個別には知っていたのですが、それ以外にも治世によって神話の編集が行われたことで、現在のような多様な姿を持つ神様になった様です。
自分が断片的に知っている知識がどういった流れの中にあり、どうつながっているのか興味が出ましたので、本書を手にとってみました。
目次:
書籍概要
日本神話の書として有名なものに「古事記」と「日本書紀」があります。
この2つが編集された当時は中国が日本から見たグローバルスタンダードだったこともあり、そこに基づいて漢文で編集されたのが日本書紀になります。古事記はもっと民話的に日本に古くから伝えられてきた伝説を集めた参考書としての立ち位置が強かったようです。
その2つを原典とし、多くは治世のために日本神話は解釈・編成されていきました。
時代の変化を追いながら日本神話がどう変化していったか。日本の神様がどう変化していったかを見ていこうというのが本書の概要になります。
日本の神様の特徴は柔軟性
本書を読んでみると、日本神話の特徴は柔軟性にあるように思います。
日本神話は、国の外から新しい変化があるたびに、その考え方を取り込みながら姿を変えていきました。これは仏教伝来時の本地垂迹思想がわかりやすいと思います。
本地垂迹思想は仏教の仏を本来の姿とし、日本に古来から伝わっていた神様は仏の仮の姿であるという考え方です。
これは仏教を治世に取り込もうとしたときに、人々にこれまでの神様とこれからの仏様の矛盾を説明するためにされた解釈です。
仏教をはじめ国外の神話では、外に別の神様が存在するとき、その多くは的とみなされます。このため、土着の神様の多くが現在では魔物や悪魔という姿で伝わることととなりました。
しかし、日本では外から伝えられたものを取り込んだり、外から来たものに取り込まれたりしながら現在に伝わっています。
適当というとらえ方もあると思いますが、これは他の神話にはない柔軟性だと思います。この柔軟性により、一柱の神様が多くの姿、多くの名前をもつ様になりました。
この多様性はイラストを描く際のモチーフとしては、1柱から複数のアイデアを考える源泉になります。本書を読んでみると、自分がイラストのモチーフにしていることも、神話の解釈の一つなんだろうなと不思議に思います。
おわりに
本書を読むことでこれまで断片として知っていた知識が線としてつながりました。
私はモチーフの資料を集めるときに源流をたどることもよくやります。知識を線でつなげたこと、古代から近代までの流れを理解できたことは、今後の助けになりそうです。
また、本書の参考資料として紹介されていた書籍にも気になるものが多くありました。特に気になった2点を記載しておきます。
- 古代歌謡論 人々の間で神は歌として伝わる
- 口語訳 古事記
この書籍は機会を作って読んでみたいと思います。
この断片があなたの星へ続く道を、少しでも照らすことを願って