今回は斉藤むねおさんの『誰でもかんたん!!構図が分かる本』を拝読しました。
以前に読んだ『イラスト構図の考え方』で構図は体系化されたパターンであり、求める印象や効果から当てはめるのが良さそうだと学びました。掲載されていた代表的な構図の他にも知識を得たいと思い読んでみました。
本書の狙いは構図の要素をモジュール化して理解することです。
本書では比較的理解しやすい技術や応用範囲が広い概念を、読者がモジュール化しやすいよう、順番を考えて説明してあります。
P2
…(中略)…
工業製品の世界では、そのような規格化され独立性が高く、追加や交換が可能な構成単位(部品)のことを”モジュール”と呼びます。
ここまで読んできた本では「代表的な構図はこういうものがあります」から入りましたが、正直ピンとこないことがありました。
比べて本書は要素の配置と印象の関係性に注目しています。
- 「画面のこのあたりに要素が配置されると人はどう感じるか」
- 「複数の要素の配置によって人はどう感じるのか」
そういった鑑賞者が感じることから確認を始め、代表的な構図へとつなげていきます。
印象や効果から構図を選びたいと考えていたところでしたので、この順序はとてもわかりやすいと感じました。
ここでは構図の組み立てのなかで「動き」に注目した場合、特に重要だと感じた「視線誘導」と「可能性空間」について書いていきたいと思います。
動きを感じさせる構図の重要なポイントは、視線誘導、トリミング、そして本章で紹介する可能性空間の3つです。この3つを題材に合わせ適宜組み合わせることによって、豊かな表現が可能になります。
P57
※トリミングは完成したイラストの最終調整の手段です。可能性空間の調整と判断したのでここでは省略しています。
「見る人の視線が動くこと」「見ているものの動きが予想できること」
「視線誘導」と「可能性空間」が作る動きは下記のような違いがあります。
- 視線誘導は鑑賞者の視線をイラスト上で動かします。
- 可能性空間は配置によってキャラクターなどの次の行動を予想させます。
まずは視線誘導からもう少し詳しく見ていきましょう。
人間は他人の目から感情を読み取るので、相手が絵画の中の人物であっても無意識に目を見て、その視線の方向を追います。多人数が登場する絵画でも、視線をうまく設定すれば、注目してほしい人物や対象へと、鑑賞者の視線を誘導できるのです。
P43
登場人物の視線での誘導はわかりやすいと思います。また、効果は同じですが「指をさす」などの仕草による誘導もあります。ただ眺めるだけではなく、誘導している要素に分けて見ることがイラストの意図を読むポイントになるそうです。
では、可能性空間とはなんでしょうか?
一言でいえば「キャラクターが動ける画面上の余地」です。
わかりやすいところでは、画面の上部へキャラクターを配置し、キャラクターの手前(画面の下部)に余白を作ると、キャラクターは前方に移動しそうな予感がします。
これは多くの人に「ものは上から下へ動く」という感覚があるためそう感じるそうです。
「視線誘導」と「可能性空間」を組み合わせることでより意図した印象を作ることができそうです。
先の例で意図を強化するために、キャラクターの視線を進む先に向け、歩くポーズをさせる。この様に意図を強化していけば、キャラクターを通して意図を伝えることができると思います。
逆に動きをなくしたい場合はどうでしょうか?
代表的な構図の1つである日の丸構図は動きの少ない構図と言われています。
この構図を可能性空間の点から考えると上下・左右で可能性空間が釣り合ってしまい、どこへ動こうとしているのか意図が読みづらくなります。その結果、その場に留まる雰囲気が強くなり動きが少なく感じるというわけですね。
可能性空間で動きの余地を作るという考え方はしていなかったので、これから試していきたいと思います。
まとめ
ポーズも動きを示す要素ですが、本書を読んでみるとポーズは意図を強化するための要素に感じます。
構図を考える場合、まずは主要な要素を画面のどこに配置するか、そに配置することで見る側はなにを予想するか、そのセオリーを知ることが大切だと感じました。
キャラクターをできるだけ大きく配置する場合、取れる余白には限りがありますが、可能性空間を意識すればより意図を伝えられそうです。
この断片があなたの星へ続く道を、少しでも照らすことを願って
「イラストを通してキャラクターの意図をつたえるための「可能性空間」とは?」への1件のフィードバック