今回は、古賀史健さんの「20歳の自分に受けさせたい文章講座」を拝読しました。
古賀史健さんを知ったのは、哲学者の岸見一郎さんとの共著「嫌われる勇気」でした。アドラー心理学の入門書として書かれた書籍です。
この本を読むまでアドラー心理学を全く知らなかったのですが、話の進め方、登場人物の言葉の調子がわかりやすく、すんなりと読める本だなと感じていました。折に触れては読み返し、そのたびに発見がある書籍です。
その本をまとめた古賀史健さんが、文章の書き方の書籍を出されていることを知り、興味を持ちました。
今、書くという機会は増え続けている。しかし「文章を書く」ということを習ったことがあっただろうか?「会話であれば説明ができる。でも、文章にしようとした途端に書けなくなってしまう」そんなもどかしさを多くの人が抱えているのではないか?では、そのもどかしさを解消しようというのが、本書の概要になります。
内容として気になったのは下記の3点になります。
- 文章を書くではなく、”伝えたい”を翻訳する
- 文章では、会話で使える非言語情報という手段を、論理に持ち替える必要がある
- 一旦すべての文章に接続詞をつけ、つながりを確認する
(不要な接続詞は後で削る)
技術的な部分については実践している最中なので、ここではその考え方に強く共感した「文章を書くではなく、”伝えたい”を翻訳する」について、本書の感想も含めて書いていきたいと思います。
文章を書き始めようとすると手が止まってしまう。始まりの単語、最初の一文それを書くのに、自分でも驚くほどの時間がかかってしまう。そんな経験は誰にでもあると思います。
文章を書こうとした時、頭の中はどうなっているでしょうか?手書きのメモや、鉛筆での下書きが見えている?あとはPCに打ち込むだけ?
自分自身を振り返ってみると、どうもそうではなさそうです。
例えば、この紹介文を書き始めようと思い立った時、頭の中にあったのは「良い書籍に出会えた」という感動。「これは他の人にも役に立つ情報だ」という予想。そして、「理解できたので文章が書けそう」という予感でした。
この、自分が感じているものを文章にしようとするときに重要になるのが「翻訳」という考え方です。
先の「感動」「予想」「予感」といった思い。これらが頭の中にある状態で、それを理解し、実感できるのは自分だけですよね。
ここではその状態を「頭の中では、その人にだけ通じる専用言語が使われている」と考えてみてください。
これを誰かに伝えたい、文章にしたいとすれば、自分専用言語を共通語に置き換える必要があります。日本人に宛てるのであれば日本語への変換する。つまり、翻訳です。
書こうとして書けないのは、言語の変換がうまくいっていないからです。
英文を日本語訳するとき、英語が得意ではなかったら、まずは単語を一つずつ調べますよね。そして、文法を当てはめて一文としての意味を掴んでいきます。
「文章を書こう」と意気込んでしまうと、単語の変換と文としての解釈を同時に進めようとしたり、そもそも単語を誤変換をしてしまっていたりと、混乱が発生してしまいます。混乱していては、思うように進みません。
だからまずは、翻訳を意識する。今浮かんでいるこの感情を日本語に当てはめると何になるか?これを意識してやってみると、頭に浮かぶものの形はあやふやで、順序もバラバラだということがわかります。
そうして見えてきた断片をつなげながら、自分の思いはこういうものだろうか?共通語=日本語として読める形になっているだろうか?と進めるわけです。
文章を相手に届けるには、さらにもう一歩が必要です。
それは、相手の言葉への翻訳です。
先に「自分の思いは専用の言語」と表現しましたが、これは自分に限ったことではありません。相手は相手の専用言語を使っている。日本語を話しているはずなのに通じないという経験は誰にでもあると思います。
文章を書く上でのアドバイスとして「読者を想定しましょう」というものがあります。
これは「読む人が普段使っている言葉を想定しましょう」ということです。
人が文章を読む時は、共通言語から自分専用の言語へ変換して頭の中に取り込みます。すんなりと読める文章は、その人の中で共通言語と自分専用言語の紐付けがされている言葉が多く使われている文章だからです。
そもそも文章とは誰かに伝えるためのツールです。自分だけがわかっていればいい。そこで終わりであれば、文章は必要ありません。
「伝えたいことがある」からこそ、相手の言葉にまで翻訳する。そう考えてみるのは、いかがでしょうか?
この断片があなたの星へ続く道を、少しでも照らすことを願って
<参考>
※audiobook.jpであれば、冒頭部分を聞くことができます。
興味がある方は、ぜひ聴いてみてください。
「「20歳の自分に受けさせたい文章講座」から文章とは翻訳であることを学ぶ」への1件のフィードバック
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