「GRID やり抜く力」から習熟の段階におけるフィードバックの種類を考える

「やり抜く力は瞬発力ではなく持久力」では、その持久力をどうやって身につけていけばいいのか?やり抜く力の強い人達は共通する段階を踏み、興味を育て、ネガティブなフィードバックも得る意図的な練習を続けている。イラスト制作が辛くなってしまうのは、習熟の段階とフィードバックがあっていないのかもしれません。

今回はアンジェラ・ダックワースさんの「GRIT やり抜く力」を拝読しました。

著者のアンジェラ・ダックワースさんは書籍名にもなっているやり抜く力を研究され、2013年にマッカーサー賞を受賞したペンシルベニア大学心理学教授です。書籍の内容としては抽象度が高く、自分で実践するまでにはフレームワークや手順を考えていく必要がありそうです。

「石の上にも三年」という故事があるように、昔からやり抜く力は大切だと言われています。では「やり抜く力」はどんな時に必要な力のことを言っているのでしょうか?

書籍内には「やり抜く力は瞬発力ではなく持久力」とあります。ここからもわかるように1時間やれば終わり、今日やれば終わりというものではなく、数ヶ月・数年と続くような長期計画を進めるために、やり抜く力は特に重要になります。

私の場合、現在もっとも力を入れているイラスト制作・技術の向上が長期計画にあたります。ここまでの経験から長期間何かを継続するには、気持ちだけでは続かないことを知っています。これからもイラスト制作・技術向上を続けていくためのヒントを得られないかと思い読んでみました。


特に気になったのが練習についての項目です。

やり抜く力が強く、成果を上げている人たちの特徴として「意図的な練習を続けている」「うまくいかなくても再チャレンジしている」ことが上げられています。

これだけをみると強い意志や気の持ちようといったところにつながりそうですが、どうもそうではないようです。やり抜く力が強い人達は習熟までの共通の段階を踏み、結果として意図的な練習を続けていけるようになり、うまくいかなくても再チャレンジできるようになったとのこと。再現性がありそうです。図にしてみましょう。

習熟の段階
習熟の段階

図を見るとわかるように、やり抜く力の強い人の特徴「意図的な練習を続けている」「うまくいかなくても再チャレンジしている」は、練習の段階としては最後の段階になります。

意図的な練習とは、いわゆるストレッチ目標を設定し、それに向けて練習するということです。自分がまだできないことにチャレンジしているので得られるフィードバックも「ここができていない」「そこが足りていない」というネガティブなものが多くなります。こういう状況が続くことを考えると気が滅入りそうですよね。

やり抜く力が強い人達はこの段階の練習をどう思っているのでしょうか?

意外なことに、やり抜く力が強い人達もこの段階の練習は面白くないと思っているようです。ただし、練習は取り組みの一つ。練習は面白くなくても、取り込んでいるそのもののことは総じてみると好きと思っているようです。

イラストを例に、ストレッチ目標として「描いたことのないモチーフを毎日1つ描く」としたとします。描いたことのないモチーフを描いている間は初めてなのでなかなかうまくいきません。時間もかかりますし、ストレスもたまります。なら、やめるかと言われれば、「イラスト制作自体は面白いし、好きなので大変でもやめない」といったところでしょうか。

ここからわかることは、習熟までの流れの初期段階でどこまで興味を育てられるか、それを好きになれるかが重要になるということです。

意図的な練習を始める前に対象を十分に好きになっていれば、多少ネガティブな要素が含まれるようになっても総量としての興味は好きにとどまります

ネガティブなフィードバックがあっても興味の総量は増える
ネガティブなフィードバックがあっても興味の総量は増える

逆に興味が十分に育っていない状態でネガティブな要素に触れてしまうと、好きの総量が減りすぎてしまうので興味を失ってしまうことになります。

物事に打ち込んでいるとスランプになることもあります。イラスト制作のスランプの一つの形として「描こうと思っても手が進まない」というものがあります。これは、イラストに対する好きのゲージが減ってしまっている状態なのだと思います。

このときのアドバイスとして「好きなものを描く」というものを見たことがありますが、これは有効そうですね。この間はポジティブなフィードバックを得られる様に情報を絞ることが重要になると思います。

他人からのネガティブなフィードバックを得るということももちろんありますが、人の作品に触れることで起こる自分からのネガティブなフィードバックというものもあります。ある程度回復するまでは、こもってしまうということも大切なのかもしれません。

スランプがネガティブなフォードバックに耐えられない状態だとすれば、まずは周りを無視して好きのバロメーターを回復させることに専念するのが重要だと思いました。


また、この考え方では相手に意見を求められた場合も発信するフィードバックを選ぶ必要があります。

始めたばかりで「面白い、面白い」と興味を育てている段階で「ここができていないから、もっとこうしたらいい」と水をさしては育つはずだった興味を摘み取ってしまうことになります。逆に興味は育ったのに「先に進む方法がわからない」という段階で「いいね、いいね」と声を掛けてもそうじゃないんだよなと思われてしまうでしょう。このあたりは相手とコミュニケーションを取りながら見極めることが大切ですね。

相手が興味を育てている段階ではポジティブなフィードバックを送る。
相手が興味を深堀りする方法を探している段階ではネガティブなフィードバックも送る。

見極めは難しそうですが、実践していきたいですね。


この断片があなたの星へ続く道を、少しでも照らすことを願って


<参考>

投稿者: 0.1

イラストレーター/0.1up project著者 厚塗りで「存在感や重さ、質感による説得力」のあるイラストを目指しています。 日本では線画をベースとしたイラストが主流ですが、そこから外れたモノもイラストの世界を広げる為に必要だと考えています。「世界観にもう一味試したい」そんなときには、ぜひお声がけください。