叡智への反証
絵画では叡智を求めて来訪した貴人へ、宝珠を惜しげもなく授ける様子が描かれています。仏教で宝珠は叡智の象徴です。それを手にしている姿からは、費やされた時間の重さを考えさせられます。それを惜しげもなく手渡す様子から、阿羅漢に到達したものの執着のなさがうかがえますね。
今回はそんな阿氏多尊者と十結の見をモチーフにしています。
見は間違った見解のことを指します。手にした宝珠へ執着してしまい、最後はその念から魔物を生み出してしまったイメージです。
手放すというエピソードを反転させ、執着を描きたかったので多くの手足を持つ生き物を探しました。今回は芋虫を採用しています。あまり描いたことがないモチーフだったことと、芋虫は日本神話で常世神として登場するので、和のモチーフとしても良いと考えました。
執着と狂気が描けていれば幸いです。
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光沢は点描で描く
最後に、制作をとおしての反省。
今回の制作では尊者の額と画面手前に来ている芋虫の胴部分にあたります。テラっとした光沢を描く中で感じたのですが、ここまで自分は思いのほか長いストロークで描いているなと気づきました。
粗い部分はそれでも良かったのですが、光が当たり視線が惹かれる部分は、点を打つように短いストロークで描いたほうが質感を出しやすいようです。これは嬉しい発見だったので、今後の制作にも取り入れていきたいと思います。
この断片があなたの星へ続く道を、少しでも照らすことを願って