『構図の技法』から構図の見方の基本”マッス”を学ぶ

『構図の技法』から構図の見方の基本”マッス”を学ぶ

今回はJ・M・パラモンさんの『構図の技法』を拝読しました。

出版は1983年と古いですが、活字(アルファベット)構図についてのページがあり、年代の古いものの方が考え方のスタートが分かりそうです。ほか、構図についての知識が補強できればと思います。

ここは、活字構図を入り口に構図の考える際に重要になるマッスについて書いていきたいと思います。

アルファベット構図とは?

アルファベット(活字)構図とは、構図内の主な要素の配置が一部のアルファベットの形になっているものを指します。主だったところでは、I・L・Zです。

以前にアルファベット構図が受け入れられやすいのは普段目にする機会が多いからという情報に触れました。

であれば、日本人なら平仮名などの構図もあり得るのではないかと思っていたのですが、どうも理由は違うようです。

フェヒナーによって研究されたように、I・L・Zといった主な文字の形に基づて絵を構成する方法は、一軍の幾何学的な形の人気と実際に一致するものです。実際、これらの文字は、長方形・角・三角形の組み合わせに基づく幾何学上の大きな可能性を芸術家に提供しているのです。

J・M・パラモン『構図の技法』グラフィックス社,1983年,p.40

ここで重要になるのが活字(アルファベット)は幾何学的な形の組み合わせであるという点です。

ドイツの哲学者フェヒナーは、最初に形の物理的現象と心理的現象との間の関係を研究した人でした。

…(中略)…

フェヒナーによって発見された形の単純さへの好みは、偉大な芸術家たちによって用いられる構図の手法とうまく和合しているというのが事実です。

J・M・パラモン『構図の技法』グラフィックス社,1983年,p.34-35

フェヒナーの実験からは目に最も心地よく、最も安らぎを与えてくれると思われるのは、幾何学的な形であると結論が出たそうです。

ここでいう幾何学的な形とは、長方形・丸・三角形など単純なものです。

アルファベット(活字)構図はこの幾何学的な形の組み合わせ。組み合わせにより、従来の構図の幅、可能性が広がったという点で納得することができました。

幾何学的な形をスタートとするなら、ひらがなは少し複雑に思えます。アルファベット構図に対する疑問を解消できたことは、今回の収穫ですね。

何がアルファベットに見えているのか?

ところで、何を見てアルファベットと言っているのか?

他の構図にも言えることですが、私たちはなにを見て、まるや三角やアルファベットだと言っているのでしょうか?

構図を見るときに重要になるのが、「マッス」という考え方の様です。

専門家たちがマッスということばで何を言わんとしているのか理解するために、まず「線」と「トーン」を見ておかなければなりません。

…(中略)…

トーンとは―専門家たちが使う専門用語を用いれば―光と影の強さのことです。異なったトーンの部分を配することでマッスは定義されます。

J・M・パラモン『構図の技法』グラフィックス社,1983年,p.29

少しわかりにくですが、マッスは画面の要素を個別に見るのではなく、トーンによって大まかにグループ化したときのシルエットといえそうです。

ここでいうシルエットとは暗い部分だけを指すわけではないことに注意してください。

私たちはこのマッスを頼りに画面の中にまるや三角やアルファベットを見つけている。

また、マッスは形だけではなくトーンそのものがもつ感覚的な重さからも、画面のバランスを取るときに重要な役目を負っている様です。

マッスという構図の基礎を知ることができたことが、本書を読んだ最大の収穫ですね。

まとめ

ここまでいくつか絵画構図の本を読んできましたが、特に画面のバランスについては感覚的な表現がおおく掴みきれていない部分がありました。

本書で得たマッスという考え方を持って、もういちど情報を整理したいと思います。


この断片があなたの星へ続く道を、少しでも照らすことを願って


<参考>

構図の技法(絵画教室シリーズ ; 10)|書誌詳細|国立国会図書館オンライン (ndl.go.jp)

投稿者: 0.1

厚塗りで「存在感や重さ、質感による説得力」のあるイラストを目指しています。 日本では線画をベースとしたイラストが主流ですが、そこから外れたモノもイラストの世界を広げる為に必要だと考えています。「世界観にもう一味試したい」そんなときには、ぜひお声がけください。

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