今回は印南敦史さんの『遅読家のための読書術』を拝読しました。
著者の印南 敦史さんは書評家としてライフハッカー日本語版を始め、複数の情報サイトに月60本以上のブックレビュー記事を書かれている方です。
1ヶ月に60冊以上の本を読むとのことですが、ご本人曰く自分は遅読家とのこと。なんとなく読んでいると1ページ5分はかかるそうです。
では、どうやって月60冊以上の本を読んでいるのでしょうか?
それははじめにの小見出しにもなっている「速読というより、正しい流し読み」です
(※以下文章では本書にならい「フローリーディング」と記載します。)
もちろん、書籍の種類によっては流し読みをしては意味がない本もあります。物語小説などが代表的ですよね。本書が流し読みで想定しているのは主にビジネス書など、情報伝達のために描かれた本です。
早く読める本は早く読み、じっくり読みたい本の時間を確保するという考え方にとても共感しました。
ここではフローリーディングの前提と、書籍の中でそもそも読まなくてもよい部分の見極めについて書いていきます。
目次:
前提は「じっくり読んでも忘れる」
レビュー記事を書き始めて気づいたことがあります。それは、「いくら熟読しても、実際には忘れていることのほうが多い」という現実。
…(中略)…
とはいえ、ここでがっくり来る必要はありません。「頭に入ってこないことのほうが多い」ということは、裏を返せば、「忘れていないものの中に、自分にとって大切な部分が凝縮されている」ということだからです。
P30 ~ 31
自分の読後を思い返しても、後で思い出せるのは印象的な言葉が1つか2つです。
フローリーディングはこの「読んでも大部分は忘れてしまう」ことを前提にしています。そして、多くの本に目を通した結果、そもそも読まなくてもよい共通の部分があるとのこと。
フローリーディングではその部分を読み飛ばすことで、読書時間の短縮を図っているようです。
目印は下記の3箇所になります。
- 商品差別化の為に挿入された「著者の自分語り」
- 理論や主張を裏付ける「個別の事例・体験談」
- 期待・危機を煽る「過剰すぎる表現」
それぞれが不要な理由を見てみましょう。
目印1:商品差別化の為に挿入された「著者の自分語り」
ほとんどの場合は、類書とどこが違うのかを読者にアピールすための、いわば「買わせるための情報」です。
P112
独自の体験談はおもしろいのですが、ここは読後に覚えていることは少ないように思います。また、読書メモを書くときも体験談の内容ではなく、そこから得たエッセンスに注目していることが多いと気が付きました。
たしかに読み飛ばしてもよさそうですね。
目印2:理論や主張を裏付ける「個別の事例・体験談」
一般的なのは「理論」→ 「事例」→ 「理論(まとめ)」という流れでしょう。まずフレームを提示し、更にそれを補強するような実例を示し、最後にもう一度、骨子となる理論なり主張なりをまとめるわけです。
だとすれば、事例部分は飛ばして「まとめ」の部分を読むだけでも、十分に話は理解できるはず。
P113
すでに過去に読んだことのある事例や、理論と結論を読んで内容がわかった場合は読まなくても良さそうです。
ただ、理論を読んでもピンとこないこともあるので、必要に応じて読んでもよい部分だと思いました。
目印3:期待・危機を煽る「過剰すぎる表現」
浮ついた話を強調している本を、僕はあまり信用していない。
いささか個人的見解が入りすぎているかもしれませんが、あくまで参考までに…。
P114
こういう部分は私も話半分に読んでいます。
気分は盛り上がりますがこの部分は「すごい!」「たいへんだ!」と言っているだけで、核心に触れることはありませんでした。
たしかに読み飛ばしてしまっても良さそうです。
読んだら書こう
前提の通り読んだ内容の大部分は忘れてしまいます。
しかし、記憶に残る1文以外にも大切だと感じた部分はたしかにあります。こういった部分は後で見返すためにも、本書では引用の形で抜き出すことを推奨しています。それに加えてその部分を抜き出した理由も書いておくよよさそうです。
時間が経つと心が動いた理由を忘れてしまいます。こうなってしまっては、引用の意味もいずれ消えてしまいます。そうならないよう、感動した「理由」も一緒に書き留めておくのです。
P91
読書中にマーカーでラインをつけたり印をつけたりしても、後から読み返すとなぜそうしたのかがわからないことがあります。
そこを重要だと考えた理由は直前の内容だけではなく、しばらく前の内容との関係で重要だと考える場合もあります。
この様にそこまでの内容の全体像を掴んでいる状態でないと、書けない理由もありますので引用とその理由はセットにしておくのが良さそうです。
まとめ
本書で紹介されている「フローリーディング」は熟読する本を探すという意味でも、効果的だと感じました。
一旦「正しい流し読み」で内容を確認し、そこで十分を感じればその本は読了。これは!と思う本であれば改めて熟読すればよいのではないかと思いました。