今回は藤本 頼生さんの『神社と神様がよ~くわかる本』を拝読しました。
以前に読んだ「読み替えられた日本神話」で、日本神話の変容について大きな流れを掴むことができました。この本で追いかけた変容は治世の事情が強い内容でしたが、日本の神様の変化への寛容さには強い興味を覚えたました。
日本の神様についてもっと知りたいと思い、本書を手に取りました。
目次:
書籍概要
日本神話と現代をつなぐものが神社です。
日本には多くの神社があります。その数は中学校1校に対して、同地区内に平均8社もあります。それほど身近な神社ですが、日本人でも神社というものを理解している人は少ないのではないでしょうか?
古代から受け継がれ、現代も残る神社とはなにか?そこに伝わる神社神道とはなにか?
身近な神社を入り口として、日本の神様を知ろうというのが、本書の概要になります。
人智を超える力、それすなわち神である
まずは日本における神の定義について見てみましょう。書籍には下記の様にあります。
人智を超えた何か並外れた力を持ち、畏敬の念を感じさせるものは、善悪を問わずすべて神である。
藤本 頼生 (2014)『 神社と神様がよ~くわかる本 』 秀和システム
ファンタジー要素を調べていると、どこかで宗教観に触れることになります。他の宗教では神は基本善であり、悪は敵ととされています。善悪の区別なく基本同じ様に接していくのは他に見ない特徴ですね。このとらえ方の広さが、神道の柔軟性の基礎になっていると思います。
また、神社神道が日本中に広がった要因も寛容な態度にありそうです。
先の通り現代でも日本中に多くの神社が残っています。そして、あちこちに同じ名前の神社が存在していますね。
これは時代が下るにつれ増えてきた個人的な祈願や現世的な祈願への要望に応えていったためです。日本の神様は氏神様と呼ばれ、本来1つの土地や地域の人々と強く結びついていました。
しかし、自分の祈願に合った神様が近くにいるとは限りません。そこで、由来の神社を近くに作るということが行われました。これが各地に残る勧請型の神社です。
都合だけで神社を増やしていいのか?とも思えますが、この寛容さも神社神道の基本的な考え方「神は1箇所に留まるものではない」という考え方があるためです。書籍には下記の様にあります。
神は常時一定の場所に鎮まるのではなく、祭祀などの時に神の御霊を招き下ろすものと考えられていたためともいえる。
藤本 頼生 (2014)『 神社と神様がよ~くわかる本 』 秀和システム
先の2つの考え方からもわかるように、日本では神のとらえ方がそもそも広いとわかります。
神社神道には来訪神という考え方もあり、古来から海を渡ってやってくる神様も存在していました。ある意味でのこだわりのなさが、内外の変化への柔軟さ・寛容さにつながっていると思います。
神とともに生きる。その基本は祈願と報告である
本書を読んでいると、神社神道は形にこだわるのではなく人々の行動に重きをおいていると感じました。その中心には神に対する祈願と報告があります。そしてその祈願と報告を行う場として古くから祭りが開かれて来ました。
祭り…(中略)…その主たる目的は、平安無事や五穀の豊作などを祈る「祈願・祈請」と、祝い事や神への恩恵に感謝を伝える「報告」にある。
藤本 頼生 (2014)『 神社と神様がよ~くわかる本 』 秀和システム
日本は四季に代表されるように自然の変化が大きい国です。人智を超えた自然の変化が身近にあることを受け入れ、そういった変化と寄り添うことを選んだ結果が神社神道につながっています。
変化は起こるもの。自分たちにはどうしようもできない事が多いことを知りながら、少しでも良くなることを願い、それが叶えば感謝する。このシンプルな考え方が教義もなく、経典もなく、教祖もない神社神道が続いている理由ではないかと思いました。
時代が下ると感謝よりも祈願に重きが置かれていっているように思います。自分を振り返っても報告や感謝についてはあまり意識していませんでした。
本書で神社神道のルーツに触れる事ができましたので、これからは報告と感謝を意識してお参りしていきたいと思います。
この断片があなたの星へ続く道を、少しでも照らすことを願って