「窓の肖像・名もなき歌」

食器を洗いながら、窓の外の風景に目を移す。
光に照らされる風景は、自分がこの家で働きはじめたあの日から変わらない様に見えた。

柔らかな光と、こなした仕事の心地よい疲労感に、いつもと変わらず歌がこぼれる。

「窓の肖像・世界の一端」

書類と書籍を読み終えて現実に戻る。
そんな時、影が忍び寄る様に世界の色が暗くなることがある。

期待される姿には今の自分にはまだ遠く、それに応えるための課題は進むにつれて増えていく。
嫌なわけではない。応えがいのある日々だ。
ただ、そんな日々も繰り返しに思えてしまう瞬間がある。

そんな時は窓を少しだけ開け、目を閉じる。
しばらくするといつもの歌声がかすかに届く。
その歌声を聞いていると、必要以上に身体を緊張させていたのだとよくわかった。