『構図がわかれば絵画がわかる』から配置バランスの天秤の支柱を学ぶ

『構図がわかれば絵画がわかる』から配置バランスの天秤の支柱を学ぶ

構図の基礎に縦と横の印象があります。目にする機会、文字として触れる機会も多くどことなく当たり前と思っていました。本書ではそのうち縦の概念である垂直線の意味合いを知ることができました。画面上でバランスをとるとき、目立つ垂直線が支柱となる。この考え方を得られたのが本書のでの収穫ですね。

今回は布施 英利さんの『構図が分かれば絵画が分かる』を拝読しました。

著者の布施 英利さんは美術学者で、美術解剖学を専門とされている方です。
勉強中の構図について、理解を深めたいと思い読んでみました。

雑感

本書では取り扱っている構図の範囲が想定よりも広かったため、現在の知識では抽象度が高すぎて応用まで落とし込めない部分が多くありました。しかし、構図という概念を広げるという点、新しい見方を手に入れる点で勉強になりました。

本書は美術史の流れをつかんでから読んだ方がおもしそうだと感じたので、また機会を見つけて読み直してみたいと思います。

それでも、読み取れた範囲で以前に参考にした本の内容が補填できる部分もありました。

今回は、応用まで落とし込めた内容を中心に書いていきたいと思います。

構図を作る天秤とその支柱

構図というものにとって重要なのは、画面内の「バランス」であります。

…(中略)…

このバランスとは、どういうものかといえば、天秤のように、左に重いものがあれば、右にもそれと釣り合うだけの重さが総計としてある、ということです。そのとき、画面にはバランスが生まれ、良い構図となり、それが「美しい」絵ともなります。

『構図がわかれば絵画がわかる』:P30

画面上の左右のバランスをとれば安定した印象になる。この点は以前にも目にしており、左右のバランスについて画面中央を支柱に見立てて左右のバランスをとるということだと考えていました。

しかし、どうも違うようです。

このバラランスを判断する基準はどこにあるのか?それにはまず、重力の線を見つけ、その線を基準にして、構図をはかってみるのです。

『構図がわかれば絵画がわかる』:p30

上記の引用は本書の「垂直線」についての引用です。垂直線は重力を暗示し、「支える」ということの基準にもなるそうです。

画面上にしっかりとした垂直線がある場合、そこが構図におけるバランスの支柱になります

本書の実例ではフェルメールの「牛乳を注ぐ女」が紹介されています。この画面では注がれる牛乳が構図における支柱になります。注がれる牛乳は画面中央より向かって左に配置され、そこを支柱として要素のバランスがとられています。

画面のバランスの支柱は必ずしも中央ではない。支柱の目印の一つは目に見える垂直線である。

垂直線とバランスについて理解を深められたことが、この内容での収穫ですね。

人影の重さ

要素のバランスという点では、「点景」の項でも興味深い内容がありました。

画面においての要素の重さでは、大きさに比例しています。ただ、人については特別と考えた方が良さそうです。

バランスにかけた位置にもおもえなくはない黒い点ですが、やはりこの位置いがいはありえないでしょう。しかもそれが、雲や建物や船ではなく、「人間」であることの意味は大きいです。

…(中略)…

もし違う位置に、人物の「点」が入っていたら、と想像してみてください。印象は全く違ってくるはずです。

『構図がわかれば絵画がわかる』:p14-15

写真の構図の書籍でも広い風景を撮るときのテクニックとして、「小さくても人を入れること」というものが紹介されています。

広い風景を見ていると視線は画面内を彷徨ってしまい、結果として漠然とした印象になります。その中に小さくても人を入れると、視線は人の周辺に固定されるため、印象がはっきりとするという内容でした。

人は人を見つけやすく、視線を引きやすい。

存在感という点において、人という要素の重さはより重くなると考えることができそうです。

大きさという重さだけではなく、存在感という重さも加味すると、画面上に大小のリズムをつくりながらバランスをとることもできそうですね。

1点遠近法は奥と2点遠近法の使いどころ

1点遠近法と2点遠近法の使い方について、どう使い分けるのでしょうか?

知識としては知っていましたし、使ってもいたのですが、明確な使い分けについてはあまり意識していませんでした。

使い分けのポイントについては、著者:布施 英利さんの息子さんが留学時に見たダ・ヴィンチの『最後の晩餐』についての感想が適格だなと思いました。

私の息子が中学の春休みに、ホームステイにイタリアに行き、そこで見たダ・ヴィンチの『最後の晩餐』について、帰国後に興奮して、こんな話をしました。

「『最後の晩餐』って、やばいよね。ふつう、3dっていうと、こっちに飛び出してくるけど、あの絵は、画面の向こう側に世界がある。いったい、どうなってるの、あの絵!」

『構図がわかれば絵画がわかる』:p88

『最後の晩餐』は1点遠近法の実例としても目にします。ここからわかるように1点遠近法は画面の奥へ空間を広げます。

1点遠近法は空間の奥行きを作ることに比べ、2点遠近法は配置された要素に立体感と画面手前に迫る迫力を与えます

遠さや広さを描きたいのか、迫力を描きたいのか。

それぞれの使いどころを意識して、構図を作っていきたいですね。


この断片があなたの星へ続く道を、少しでも照らすことを願って


<参考>

投稿者: 0.1

厚塗りで「存在感や重さ、質感による説得力」のあるイラストを目指しています。 日本では線画をベースとしたイラストが主流ですが、そこから外れたモノもイラストの世界を広げる為に必要だと考えています。「世界観にもう一味試したい」そんなときには、ぜひお声がけください。

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